コミュニケーションを円滑にしたり、人の成長を促したりするのに褒めることが必要であるというのが今の定説です。

しかし褒めるという行為は、簡単そうで意外と難しいことなのかもしれない、と思った経験はあるでしょうか?

実際、他人を褒めることがなかなかできない、あるいは改めて考えてみるとあまりしていないという人は多いことだろうと思います。

ここでは、そんな他人を褒められない人の主な心理的な特徴と、人を褒めるべき代表的立場と言える上司や親をケーススタディーとして取り上げてみます。

 

他人を褒められない人の心理的な特徴

負けた気がして気分が悪くなる

相手を褒めると、自分が負けた気がするので褒められないという人は多くいます。

この心理が強いタイプの人は、常に他人と自分とを比べて勝ち負けで考えてしまうという特徴があります。その根底には大きなコンプレックスや劣等感があるので、自分が褒めた際にそれが浮き彫りになることが嫌なのです。

ただし、このタイプの人も自分よりもはるかに優れている相手には、初めから土俵に立たないので素直に褒められます。つまり、相手をライバルだと認識している時こそ、褒めることができないのです。

 

褒めた相手が喜ぶのが嫌

これは誰かを褒めた時、相手が喜ぶ姿を見るのが嫌だという心理です。

相手に対し苦手意識やあまり好きではないという感情を持っていたりするので、褒めて喜ばせたくないために人を褒められないのです。

またはライバルだと思っているので、相手を認めたくない場合もあります。

このタイプの人は、好きな相手には素直に褒める言葉をかけられるものですが、苦手であったり、嫌いな人だからこそ褒めることができなくなってしまうのです。

 

褒めるより褒められたい

「誰かを褒めるよりも褒められたい」という理由から、相手を認めたくないという心理もあります。

これは1で挙げた「負けた気がして気分が悪くなる」と心理的と通じるところがありますが、自分が一番優れているという考えや、誰かに認められたいという承認欲求を強く持っている人は、他人を褒めることが難しいのです。

そしてこのようなタイプの人の一つの特徴は、誰かに褒められたい気持ちから自慢話が多くなりがちなことです。自慢話をして、自分の価値を認めさせたいのです。

また、得てして自分の自分に対する評価が客観的な評価を大きく上回っていて、周りからは取るに足らない人物と思われている傾向が強いです。

 

ちなみにですが、自慢話ばかりの人は周囲から面倒くさいと思われ、敬遠されてしまいます。

褒められたい気持ちが強い人は、褒めることはなかなかプライドが許さないかもしれませんが、積極的に褒めた方が褒められる機会が増えます。

誰かを認め尊重できる人の方が当然魅力的なので、人が集まりやすくなるからです。褒められたいのであれば是非そうなれるように努めてください。

 

褒め方が分からない

どのように相手を褒めればいいのか分からない場合も、相手を褒めることができません。

上でご紹介した3つの心理タイプとは異なり、“褒めたくない”のではなく“褒めたいけれど褒められない”のが特徴です。

このようなタイプの人は、コミュニケーションが苦手な人に多いです。

内心は相手を認め賞賛しているのに、どのような言葉をかけたらいいのか分からないのです。

 

もし相手を褒めたいけれど褒められないのであれば、難しい言葉で表現しようとしないで、素直な気持ちを伝えるといいでしょう。

相手も、凝った表現を求めているわけではありません。

例えば、「すごいですね」「さすがですね」等、一言だけでも声をかけると今よりもっと人間関係が良好になるはずです。

 

褒めることは無駄な行為

褒める=無駄という心理的な特徴(考え方)の人は、なかなか人を褒められないです。

というより、これは「褒めない」といった方が正確ですね。

たとえば、社会ではお世辞として人を褒めることがよくあります。顧客に対して、それほど凄いと思っていなくても「さすがですよね」ということは普通のことです。

褒めるのが無駄だと思っている人は、基本的には本当に褒めるようなことはなくて、ほとんどはこういったお世辞だと考えているのです。

これはかなり自分に自信があって、プライドが高くかつ実際にキャリアもあるタイプに多いですね。自分が褒められるのはお世辞ではなく、本当に褒められる価値があるからだと考えています。

あるいは、褒めることによって慢心する・あるいは油断が生まれるからという理由で、褒めるという行為そのものは相手にとってためにならない、という考えで人を褒めない人もいます。

 

 

ケーススタディー

部下を褒められない上司の心理的な特徴

部下を褒められない上司の場合の心理としては、多くの場合は名目上5で、内心は1になります。

これはどういうことかと言うと、一応本人は口では

「褒めるほどのことでもないだろう」

「褒めてもお前のためにならん」

「子供じゃあるまいし」

と、褒めることの不必要性を強調するのですが、ほとんどの場合において、実は心の奥底には褒めることに対しての抵抗感があります。

「負けた気がして気分が悪くなる」であったり、「褒めるより褒められたい」という心理ですね。

つまり、その場合における「褒めることは無駄な行為」という考え方は、自分の褒めないという行為を正当化するための理屈に過ぎないのです。

 

ですから、あの手この手で褒めることの重要性を提示してみても、上司が褒めるようになることはほぼないでしょう。

もちろん上からの命令であればやりますが、かなりぎこちなくなると思います。

もともと乗り気でないのに加え全く慣れてもいないので、大袈裟で不自然で、やられた方はあまり褒められた気がしないでしょうね(笑)

 

子供を褒められない親の心理的な特徴

子供を褒められない親については、多くの場合は1~5の心理がバランス良く絡んでいるのですが、特にどの心理が強いのかは人によって違ってきます。

ただ、褒めることが無駄な行為だと考えている親は今時ほとんどいないので、基本的には1か3、4辺りが強いでしょう。

ですから、褒め方をしっかりと学んで、しかし自分の心の深い部分に劣等感があって抵抗感を覚えている場合は、多少苦痛でも我慢して子供褒めるようにしましょう。

さすがに越えるべきハードルが「負けた気がして気分が悪くなる」「褒めるより褒められたい」辺りのみになれば、子供のためを思えばできるはずです。

特に普段褒めてくれない親が褒めてくれたら、子供にとって忘れられない日になりますよ。

 

まとめ

他人を褒められない人には、様々な心理が働いています。

例えば、誰かを褒めると自分が相手よりも劣っていると認めている気がして褒められない人や、相手に苦手意識があるので褒めることで喜ばせたくないというものです。

どちらもプライドが高く、勝ち負けにこだわる性格と言えるでしょう。

また、どう褒めたら良いのかわからない人、褒めるのは無価値だと考えている人もいます。

しかし褒めるという行為は、大切な相手とのコミュニケーションツールです。

しかも、相手にとっての自信につながり、大きな成長のきっかけとなり得る素晴らしい行為です。

ですから、特に現在ご自身が上司や親、あるいは先生であったりという立場で褒めらないという方は、何とか自分が抱えている褒めるための障壁を一つ一つクリアして、褒められる人間になることを心掛けてください。